離職者

吉川 謙一
役職
客員上級科学研究員 (from 2011/04/01 to 2019/03/31)
科学研究員 (from 2008/02/01 to 2010/03/31)
本務地
京都大学

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Last Update 2023/12/19

私の現在の研究対象は, 標準束が自明な代数多様体に対する正則捩率不変量です。 そのような不変量の典型例として, 私が2004年に導入した対合付きK3曲面の不変量があります。 対合付きK3曲面の変形同値類は75種類から成り, それに対応して75種類のモジュライ空間が生じます。 それぞれのモジュライ空間上で, 正則捩率不変量はBorcherds積のPeterssonノルムとして与えられ, そのBorcherds積の明示的な表示も知られています。 これらのBorcherds積に現れる楕円モジュラー形式の幾何学的意味を理解することは, 興味ある未解決問題です。 別の正則捩率不変量の例としては, 3次元Calabi-Yau多様体の不変量としてBershadsky-Cecotti-大栗-Vafaにより1994年に導入されたBCOV不変量があります。 この不変量は, 弦理論のA-模型における種数1-インスタントン数のB-模型における対応物と考えられています。 種数1におけるミラー対称性は, 種数1-インスタントン数の母関数とBCOV不変量の等価性として定式化されるので, この不変量は大変重要です。 私は幾つかの古典的なCalabi-Yau多様体(ミラー5次超曲面やBorcea-Voisin多様体)に対して, そのBCOV不変量を計算しました。 また, 近年の研究で, BCOV不変量をabel的な3次元Calabi-Yau軌道体に対して拡張しました。 種数1のミラー対称性に加え, 私はBCOV不変量の双有理不変性の問題や, クレパント特異点解消におけるBCOV不変量の比較についても興味を持っています。 ごく最近は, 高次元多様体の正則捩率不変量を研究しています。


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