杉本 茂樹
|
Last Update 2023/12/19
この世はいったい何でできているのだろう? この素朴な疑問に答えるのが、素粒子論の重要な目標の一つです。現在のところ、あらゆる物質はクオークやレプトンと呼ばれる素粒子から構成され、その間には4つの基本的な力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)が働いていると考えられています。しかし、2004年ごろにゲージ/ストリング双対性の研究を通じて、これとは全く異なる別の可能性を垣間見させる糸口のようなものに出くわしました。標準的な素粒子の理論によると、陽子や中性子は3つのクオークが結合したもの、中間子はクオークと反クオークが結合したものであり、その間に働く強い力は量子色力学と呼ばれる理論によって記述されると考えられています。ところが、これと同じ内容の物理が、素粒子ではなく「ひも」を物質の基本的な構成要素と考える弦理論によって記述されることを示唆する証拠が見つかったのです。これによると、中間子は「ひも」で表され、陽子や中性子はDブレインと呼ばれる一種のソリトンとして表されます。この記述に基いて近似計算を行ったところ、さまざまな物理量が実験とうまく合うことが分かりました。まだまだ理論的に詰めなければならない課題は多いのですが、大変面白い可能性として、今後の展開に期待しています。
Back to Member List.