Alexey Bondal
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Last Update 2024/02/19
数学者でない研究者には、数学のことを、自分の研究に応用可能な時にはいつでも使いたい便利な技術的ツールの山と考えがちな人たちがいます。数学者の中にも、数学の中でとりわけ技術的な分野であるホモロジー代数と代数幾何学について、同様の見解を持つ人たちがいます。数学に対する、また、特に上記の分野に対するこのような限定的なアプローチでは、ものの役に立たないことが多いのです。経験的には、ホモロジー代数と代数幾何学を研究に応用する際に、本質を見抜くには、単に具体的な結果だけではなく、理論のイデオロギーそのものを用いなければなりません。
今日、私の主要な研究課題であるこれらの分野は、数学、数理物理学、ストリング理論の様々な分野に大きな影響を与えています。私は、ホモロジー代数における高等な技術である導来圏を手段として、非可換幾何学へのアプローチを展開しました。導来圏は非常に抽象的なツールとして出現しましたが、現在では物理学でトポロジカルな場の理論のDブレーンを記述する最も強力な方法であると考えられています。物理学者は、自然界の構造に関する事実を記述するため、様々な命題を提起します。それらを数学的に理解するためには、物理への応用と並行して、ホモロジー代数の基礎とその代数幾何学への応用を発展させ続けなければなりません。私の研究成果には次のようなものがあります。ある代数多様体の幾何と表現論とのホモロジカルな関係の発見、代数多様体をその導来圏から再構成すること、双有理幾何学における極小モデル・プログラムのホモロジカルな解釈、Serre関手およびそれに基づく導来圏の不変量の導入、三角圏の拡張の構成、三角圏の特殊な基底であるexceptional collectionsの集合への組みひも群の作用の発見などです。
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