福来 正孝
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Last Update 2022/11/21
天體物理學的宇宙論の理論的及觀測的研究を二十年來行ってきた。1988年頃より理論的研究と併行して其時點で入手可能な觀測データを用ひたFriedmannUniverseの檢証の仕事を始めたが、宇宙論の檢証に耐へる觀測データは僅少で宇宙論を實証科學として意味あるものにする爲には、宇宙論的に意味を持得る觀測の必要性を痛感した。之は今迄のものと根本的に質と規模の異った觀測の必要性を意味するものであり、それ故に觀測に着手した。
丁度この時期にアメリカの友人よりdigital skysurvey計画(其后最大の出資者の名を冠しSloan Digital SkySurvey:SDSSと名付けられた)への参加を打診されたので、宇宙論に興味を有する日本人の天文家のグループを作り経費を「文部省特別推進研究」として獲得して参加する事にした。従って日本のグループは同計画當初のデザイン時期からの参加であり特に測光觀測の準備―デザインと機材の建設―に寄與してきた。私自身は十年以上に亘り此計画の遂行の爲働いてきたが1999年の觀測開始以後は、宇宙論と銀河天文學の解析を中心に行ってゐる。現段階に於いてSDSS計画は當初の目標を達成したものと認知されてゐるが、就中最も重要なのはΛCDMに基づく宇宙論の檢証とその中味の精密化である。更にSDSSに據って取得されたデータは今後何十年に亘り精密な天文科學の研究に用ひられるであらう。
現在私の行ってゐる主要研究課題は、宇宙に存在するエネルギーを目録化し各項目間の収支の無撞着性を調べ上げる事である。この仕事は今迄に爲された觀測情報を總合編纂するものであると共に、各天體物理過程の現在の知識を一つの見方で統合しやうとするものであり、無撞着性の試驗は我々の知識の限界を探る事を目標としてゐる。
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