西道 啓博
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Last Update 2025/01/08
近年の天文観測技術の飛躍的な発展を受け、我々の宇宙全体を記述する基本的な枠組みが詳細に分かってきた。しかしながら、宇宙大規模構造の進化を支配し、銀河の運行に影響する未知の重力源「暗黒物質」や、現代物理学最大の謎である近傍宇宙の加速膨張を引き起こした「暗黒エネルギー」といった宇宙の主たる構成要素の正体を特定するには至っていない。より初期の宇宙に目を向けると、宇宙論の諸問題を一挙に解決する指数関数的宇宙膨張「インフレーション」も現象論的な仮説に過ぎず、その詳細については多数の模型が提案されている。 今後ますます進んでいく大規模観測計画は、これらの宇宙論の重要課題に何らかの答えを与えると期待される。そこから得られるビッグデータを用いた宇宙論を推進するには、かつてないほど緻密な理論模型の構築、大規模な数値シミュレーションによるテストや、最大限の情報を引き出すための高度な統計的手法の開発が求められる。これら複数の切り口から、私は観測と理論の橋渡しとなるべく広範な理論的課題に取り組んでいる。基礎的な課題としては、精密宇宙シミュレーションに基づく宇宙の大規模構造が持つ情報の伝播に関する基礎的な理解の深化、実践的なものとしては、観測データに直接適用可能な統計解析の方法論の開発に力を入れている。
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